注目ベンチャー紹介:Polaris Electro-Optics

Written by Hiroaki Kawada

今回の注目ベンチャーの紹介は Polaris Electro-Optics(PolarisEO) です。
PolarisEOは、Ferroelectric Nematic Glass(FenGlass)という強誘電ネマティック材料を用いた、次世代シリコンフォトニクス向け高速モジュレーターを開発するスタートアップです。
※取り扱い注意!こちらの情報の展開は社内限りです※

Polaris EO

https://polariseo.com/

サービス/プロダクト概要

  • PolarisEOは、強誘電ネマティック液晶(FNLC)をガラス化した独自材料「FenGlass(FNG)」を中核に、シリコンフォトニクス(SiPh)上へ統合する高速光モジュレーターを開発
  • ターゲットは200G+/lane世代のデータセンター通信であり、将来的には400Gクラス以上の帯域も視野に入れている
  • モジュレーター(光変調器)とは、レーザーから出る一定強度の光に対し、電気信号(0/1など)に応じて光の位相や強度を高速に変化させ、データを光に“載せる”ためのデバイス
  • 現在の光通信では、1レーンあたり50G→100G→200Gと進化が進んでおり、この変調器の速度・消費電力・サイズがシステム全体のボトルネックになりつつある
  • FenGlassは、自発分極を持つ非中心対称構造を有し、Pockels効果(伝ある印加に応じて直線的に屈折率が変化)によって電場に比例して屈折率が変化する
  • この変化によって光の波の性質を領して二つの光(波)を干渉させて、光の位相や強度を高速に変化させた光の信号を形成(Mach-Zehnder Moudulator構造:MZM)
  • 電子分極起源であるため応答は極めて高速で、理論上は200Gbaud級の動作も可能とされます。従来のシリコンキャリア注入型変調器と異なり、速度向上と消費電力低減を同時に狙える設計思想が特徴

特徴/提供価値

  • 従来のシリコンMZMは、キャリア効果(プラズマ分散効果)を利用してシリコン中の自由キャリア濃度を変化させることで屈折率を変調する
  • この方式では、十分な屈折率変化を得るためにキャリア注入や空乏層制御を行う必要があり、高速化のためにドーピング濃度を高めたりデバイスを短くすると、導波路損失や遅延が増大します。その結果、帯域向上と引き換えに消費電力増大や光損失の増加というトレードオフが生じるのが次世代通信における課題
  • FenGlassはPockels効果を利用することで、線形応答かつ低誘電率(ε ≈ 4)という特性を持ち、高速動作時のエネルギー効率を改善する
  • また、最終状態では材料がガラス化し分極方向が固定されるため、動作中に分極維持用のDCバイアス(分極されるための追加電圧のイメージ)が不要であり、システム全体の消費電力削減に寄与する
  • データセンターではI/O電力と熱設計が重大な課題となっており、モジュレーター単体の消費電力削減はスイッチASIC周辺の電力密度緩和に直結
  • CPO(Co-Packaged Optics)時代においては特に、このエネルギー効率の差が実装可能性を左右する可能性がある

ビジネスモデル

  • 材料技術とデバイスIPを中核としたB2Bモデル
  • 材料は自社、デバイス製造はファウンドリ+OSAT活用という分業型構造を採用
  • 既存SiPhサプライチェーンに統合可能なモジュレータ設計のため、設備投資を抑えながら他方式のモジュレーターよりもコストを押さえつつ量産適用を目指す戦略
PolarisEOのモジュレーターのサプライチェーン(FNG材料はOSATに提供、導波路に注入)

市場動向・なぜこの会社なのか?

  • データセンター光通信は、400Gから800G世代へと移行が進む
  • 現在は400Gで8×50Gbps/lane、800Gでは8×100Gbps/laneという構成が主流で、レーン当たりの高速化が進行
  • しかし、ASICとプラガブルモジュール間の電気配線が長い従来構造では、レーン速度を引き上げるほど消費電力と信号損失が急増する課題があった
  • この制約を背景に、光エンジンをASIC近傍に配置する**CPO(Co-Packaged Optics)**が注目されている
  • この流れの中で、モジュレーター材料の競争も激化し、キャリア型やGeSi、III-V系に加え、EOポリマー、BTO、TFLNなどPockels材料が台頭
  • PolarisEOのFenGlassはその一角に位置し、材料レイヤーから高速・低消費電力化を狙うアプローチに独自性がある
モジュレーター材料の特徴比較表

顧客・競合・パートナー

  • 顧客:,PICモジュールメーカー、ハイパースケーラー
  • パートナー(候補含む):GlobalFoundries, Tower Semiconductor, OSAT (ASE, Amkor, JCET)
  • 競合:NLM Phitonics(EOポリマー), HyperLight (TFLN: Thin-Film Lithium Niobate), Sumitomo Electric (III-V / Si ハイブリッド)
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