注目ベンチャー紹介:South 8 Technologies

Written by Ryo Takei

今回の注目ベンチャーの紹介はSouth 8 Technologiesです。
South 8 Technologiesは、従来の液体電解質に代わる独自の液化ガス電解質「LiGas®」を開発し、特に寒冷地用途においてリチウムイオン電池・EVバッテリーの性能と安全性を大幅に向上させることを目指す米国スタートアップです。

※取り扱い注意!こちらの情報の展開は社内限りです※

South 8 Technologies

https://south8.com/

サービス/プロダクト概要

  • South 8 Technologiesは、航空宇宙・極地(特に寒冷地)などの過酷環境下でも安定動作する、液化ガス電解質ベースの革新的なリチウムイオン電池用電解質材料「LiGas®」を開発しています。

出所:South 8 Webサイト

特徴・提供価値

  • 独自の液化ガス電解質「LiGas®」:加圧状態の液化ガスを電解質として用いる独自技術「LiGas®」を開発。従来の可燃性有機溶媒とは異なり、ガスの高揮発性と低粘性を活かして高速イオン伝導と高い安全性を両立する。
  • 広範囲の動作温度(-60℃〜+60℃):液化ガス電解質は低温でも粘度が急上昇せず、極低温環境でのイオン輸送を維持できるため、航空宇宙・極地用途において大きな優位性がある。これは従来の液体電解質(一般的な動作温度は-20℃以上)では困難だった領域。
  • 高い安全性:LiGas®は使用中の圧力条件下でのみ液体状態を保つため、セル破損や異常加熱時にガス化して圧力を逃がす「自己ベント機構」に似た挙動を示し、発火・爆発を引き起こす熱暴走リスクを大幅に低減する。また、発火点が高く、引火しにくい特性をある上、非毒性・非腐食性である。
  • 正極・負極材料や製造プロセスとの高い互換性:LiGas®は、NMC(Ni-rich系:NCM811)など既存の正極材料、シリコンアノードなどの負極材料を含む次世代電池材料と組み合わせが可能。また既存の円筒形セル製造設備における後工程(高圧充填プロセス)を小規模改修するだけで導入可能であり、完全な製造ライン変更を伴う固体電池と比べてスケールアップが容易となる。

出所:South 8 Webサイト

ビジネスモデル

  • 同社は、電解質材料の製造およびライセンス供与を通じて、セルメーカーやEV・航空宇宙・防衛用途の企業とのパートナーシップを構築している。
  • またLiGas®を高圧充填するための専用後工程設備を独自に開発。セルメーカーは電解質注液前の空の乾電池を同社に供給、同社がLiGas®を充填し、リチウムイオン電池の最終仕上げを行う。

なぜ今この会社なのか

  • EVや航空宇宙、寒冷地インフラなどの用途において、従来のリチウムイオン電池(可燃性液体電解質)では対応できない温度域や安全性の課題が浮き彫りになっている。同社のLiGas®技術はこうした制約を根本から解決する可能性を持ち、次世代のリチウムイオン電池材料として注目を集めている。
  • LiGas®はTIME誌が選ぶ2024年の最高の発明(私たちの暮らしを変える200のイノベーション)にも選出された。

顧客・競合・パートナー

  • 顧客:航空宇宙、防衛産業、寒冷地インフラ、EV・モビリティ企業、電池メーカー
  • 競合:Solid Power(固体電解質)、Amprius(シリコンアノード×航空宇宙)、Safire(自己消火機能をもつ電解液添加剤)
  • パートナー:NanoGraf(シリコンアノード)と提携し米国防総省との契約を締結、LG Technology VenturesやPorsche Venturesなどが出資

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