注目ベンチャー紹介:NuCube Energy
2026
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Written by Ryo Takei
今回の注目ベンチャーの紹介はNuCube Energyです。
NuCube Energyは、小型モジュール型の核分裂マイクロリアクターを開発する次世代原子力スタートアップです。コンパクトで安全性の高い原子炉を工場製造し、産業施設やデータセンター、遠隔地などに設置することで、安定したゼロカーボン電力と高温熱を提供することを目指しています。
NuCube Energy
サービス/プロダクト概要
- NuCube Energyの中核技術は、電力と高温の工業用熱を同時に供給できる高温マイクロリアクター「NuCube DeccaCell™」です。原子炉はTRISO燃料(多層被覆粒子燃料)とヒートパイプ構造を採用し、可動部を最小化することで高い安全性と信頼性を実現しています。最大1,100℃の高温熱を供給できるため、発電に加え、鉄鋼・化学・製造業などの産業プロセスにも活用可能です。
- DeccaCell™ は、道路や鉄道で輸送可能なモジュールとして設計されており、現地で迅速に設置できる点も特徴です。また、燃料交換なしで7〜30年間にわたり最大15MWの電力を安定供給でき、従来の大型原子力発電所と比べて短期間かつ柔軟に導入できる分散型エネルギーソリューションとなっています。

特徴・提供価値
- 高温工業熱と電力を同時供給:NuCubeのリアクターは最大1,100℃の高温熱を供給可能で、発電だけでなく工業プロセス熱としても利用可能。これにより、天然ガスに依存してきた産業の脱炭素化にも貢献する。
- 高い安全性とシンプルな設計:TRISO燃料(高温耐性と放射性物質の閉じ込め性能を大幅に向上させた先進炉向け燃料)とヒートパイプ冷却技術を採用し、可動部を大幅に削減した設計により、受動的安全性と高い信頼性を実現している。
- モジュール型で迅速導入:原子炉は工場製造されたモジュールとして輸送・設置でき、従来の原子力発電所のような長期建設を必要としない。これにより、産業施設や遠隔地でも迅速な導入が可能。
- 分散型エネルギー供給:送電網から独立したエネルギー供給が可能で、データセンターや鉱山などのエネルギー需要の大きい施設に対して安定したベースロード電力を提供できる。

ビジネスモデル
- NuCube Energyは、産業顧客向けにマイクロリアクターによる電力・熱供給ソリューションの提供を構想しています。原子炉は自社で保有せず、産業企業などとの合弁事業を通じて展開し、パートナーが原子炉を保有する一方で、NuCubeは技術提供と「Operations-as-a-Service(運用サービス)」を担うことで継続的な収益を確保します。複数サイズのモジュール型原子炉により用途に応じた柔軟な導入が可能であり、2029年までの初号機稼働を目指しています。
なぜ今この会社なのか
- AIデータセンター、産業の電化、そして製造業の国内回帰の拡大により、安定した大量電力と高温熱の需要が急増している一方で、再生可能エネルギーだけでは常時安定供給が難しいという課題がある。NuCube Energyのマイクロリアクターは、ゼロカーボンで安定した電力と高温熱を供給できるため、産業の脱炭素化とエネルギー安定供給の両立を可能にする新しい選択肢となり、特にエネルギー集約型の産業用途で天然ガスに代わる原子力技術を提供するとともに、遠隔地や分散型環境においても競争力のある電力供給を実現する。
顧客・競合・パートナー
- 顧客:データセンター事業者、製造業(鉄鋼・化学・半導体)、鉱山・遠隔地インフラ企業など
- 競合:小型モジュール炉(SMR)やマイクロリアクターを開発する原子力スタートアップ Radiant、Aalo Atomics、Valar Atomics など
- パートナー:Energy Vault社とAIデータセンター向け電力供給に関する戦略的連携や、Shell GameChanger、Halliburton Labsなどの支援を受け、技術開発と商業化を進めている
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