注目ベンチャー紹介:Gather AI

Written by Yuhei Yano

今回の注目ベンチャーの紹介はGather AIです。

同社は倉庫や物流施設における「在庫の見えない時間・空間(blind spot)」をなくすためのPhysical Intelligenceプラットフォームを提供するスタートアップです。

※取り扱い注意!こちらの情報の展開は社内限りです※

Gather AI

https://www.gather.ai/

サービス/プロダクト概要

  • カメラ搭載ドローンやフォークリフト、固定カメラ、ウェアラブルデバイスなどを活用し、倉庫内の「棚」「パレット」「ケース」などの状態をAIで自動的に認識。
  • これを通じて、従来は人手で行っていた棚卸・在庫チェック・欠品検知を自動化し、リアルタイムでの在庫精度向上と作業効率化を実現。
  • 同社は自社の立ち位置を「the physical intelligence layer for intralogistics(倉庫内物流における知能レイヤー)」と位置づけ、単なる棚卸ツールではなく、倉庫運営全体を最適化する情報基盤を目指している。
画像出所:同社Webページ


特徴/提供価値

■ “カメラのみ”で構築する物理知能レイヤー

  • Gather AIの最大の特徴は、「カメラから始まるAIスタック
  • 自律ドローンやMHE(フォークリフト)、AMR、固定カメラ、ウェアラブルカメラといった多様な視点から撮影された画像を、Edge AI(現場側での処理)とCloud AI(クラウド解析)で統合
  • これを基に「どの棚に何があるか」「空いているラックはどこか」「どのケースが破損しているか」までを自動で判断します。

■ タイムスタンプ不要のComputer Vision

  • 同社の独自技術は「タイムスタンプ非依存の状態推定AI
  • 一般的なドローンやロボットでは「いつ・どこで撮影したか」を正確に同期する必要がありますが、Gather AIはコンシューマグレードのカメラでも動作するよう、画像の特徴点や空間構造から自律的に位置と時間を推定
  • これにより、高価な産業用カメラやGPS同期装置が不要となり、低コストで高精度な可視化が可能になる

■ 倉庫全体を継続的に“見える化”

  • 棚卸の瞬間的な自動化だけでなく、入庫・保管・ピッキング・補充・梱包・出荷といった倉庫内オペレーション全体の流れをリアルタイムに観測・学習
  • このデータをもとに、AIが「CoPilot」として稼働状況を分析し、改善提案や労働配置の最適化、設備稼働率の向上などを支援する。

ビジネスモデル

SaaS+ハードウェア連携型のサブスクリプションモデルを採用

  • 初期導入費用:ドローン設定、倉庫マッピング、システム統合
  • 月額サブスクリプション:クラウド解析、ダッシュボード利用、WMS連携API
  • 追加オプション:ケース数推論、稼働率分析、マルチ拠点最適化(Network Intelligence)

導入のインフラ変更を極力抑え、「Plug & Playで導入できる倉庫AI」をコンセプトにしており、既存のWMS(例:Manhattan、Blue Yonderなど)と容易に連携可能

市場動向・なぜこの会社なのか?


■ 市場背景:物流倉庫の「データ化」が次のDXテーマ
  • Eコマースの拡大、労働力不足、サプライチェーンの複雑化を背景に、倉庫業界では「見える化と自動化の融合」が急務
  • しかし、ロボット化やWMS導入が進んでも、実際に現場で何が起きているかをリアルタイムで把握する手段は依然として限定的
  • この“見えない空間”を埋めるソリューションとして注目されているのが、Gather AIのようなPhysical Intelligence(物理知能)レイヤー
■ なぜGather AIか?
  • 競合のVerity(完全自律ドローン)やDexory(AMR型スキャンロボ)は、高精度かつ大規模展開可能な一方で、初期投資やインフラ依存度が高いという課題
    一方Gather AIは、
    • カメラ主体で、既存ハードを活かせる
    • タイムスタンプ不要技術により、安価な機材でも高精度を実現
    • WMS連携で意思決定に直結するデータを提供
      といった“軽量で拡張性の高い構造”が強み
    言い換えれば、「倉庫DXのラストワンマイル」を、低コストかつスマートに埋めるプレイヤーです。

顧客・競合・パートナー

  • 顧客:3PL(サードパーティ物流)、小売/eコマース企業、製造業の倉庫・冷凍倉庫、サプライチェーン統合企業
  • パートナー:WMS連携:Manhattan、Blue Yonder、データ連携:Samsara、FourKites(物流IoT・トラッキング)、ハードウェア協業:DJI等のドローンOEM、フォークリフトメーカー
  • 競合: Verity(自律ドローンによる棚卸し自動化)、Dexory(自律ロボットで倉庫全体をスキャン)、Corvus Robotics(ドローン向けシステム)
※取り扱い注意!こちらの情報の展開は社内限りです※

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