注目ベンチャー紹介:FaroHealth
2025
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08
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04

Written by Yuhei Yano
今回の注目ベンチャーの紹介はFaroHealthです。
同社は臨床試験の設計(プロトコル作成)に特化したAIネイティブなクラウドプラットフォームを開発・販売するスタートアップです。
FaroHeatlh
サービス/プロダクト概要
- 従来、WordやExcelなどで属人的かつ非構造的に行われていた臨床試験のプロトコル設計業務を、構造化データ+生成AI+AIエージェントによってデジタル化・効率化する
- 同社の中核製品「Study Designer」を起点に、設計された試験プロトコルをそのままEDC(電子症例報告書)やCTMS(治験管理・支援システム)、Sample Mgmtといった下流の臨床運用システムへ連携できる「Agentic Workflow」を構築。製薬企業の“治験設計の司令塔”として機能する"AI enabled SaaS"です
特徴/提供価値
- Faroの最大の特徴は、「構造化+AI+統合性」の3点を同時に実現している点にある。
- 複雑度スコアリング:試験プロトコルの内容(訪問頻度、検査数、患者負担など)をAIが定量化し、設計の過不足や改善点を可視化
- 設計のリアルタイムシミュレーション:アセスメントの追加・削除による時間・コスト・負担の変化を即座に表示
- LLM統合による文書生成・改善提案:過去の成功試験パターンを学習したLLMが、構造化設計を自然言語ドキュメントに変換、あるいは改善提案を実施
- 自動エージェント(Agent)による下流工程支援:EDC構築、モニタリング計画、eCOA、ランダム化など、臨床運用タスクも自動化

ビジネスモデル
- 複数年契約SaaSモデルを採用
- 価格体系:試験数や導入モジュール数に応じて段階的に設定
- アップセル戦略:設計 → 文書生成 → EDC構築 → CTMS連携へと水平拡張(Land and Expand型)
市場動向・なぜこの会社なのか?
- 臨床試験は年々複雑化・高コスト化が進み、プロトコルの変更回数はこの10年で2倍以上に増加。一度のプロトコル修正で数十万ドルの損失が発生するとされ、設計段階での最適化は業界共通の喫緊課題となっている
- その一方で、従来の臨床ITは運用支援(EDC、CTMS、eTMF)が中心で、試験設計を構造的に支援するツールは存在しなかった。
- 同社はこの「空白領域」をAIと構造化技術で埋める唯一のSaaSベンダーであり、VeevaやOracleといった業界プラットフォーマーと補完関係を築いている。
- さらに、Merckとの共同研究では6試験で1.3億ドル超のコスト回避、16万時間以上の患者負担回避、複雑度200ポイント削減という実績もあり
顧客・競合・パートナー
- 顧客:
- Merck(6領域にわたり導入、共同論文発表)などグローバル大手製薬会社
- パートナー:
- Veeva Systems: Vault EDCと連携し、プロトコル設計->データ収集の流れをAPI統合
- 競合:
- Deep 6 AI(被験者探索AI)
- Phesi(プロトコル分析)
- QuantHealth(治験成功予測)
- Medidata / Veeva(EDC/CTMS)
などFragmentedに多数存在