注目ベンチャー紹介:Eclipse Energy
2026
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Written by Yuhei Yano
今回の注目ベンチャーの紹介はEclipse Energyです。
同社は、既存の油田・枯渇油井を活用し、地下で水素を生成・回収する「地下水素生産」技術を開発するスタートアップです。
Eclipse Energy
サービス/プロダクト概要
- Cemvita(独自菌株を用いて炭素廃棄原料を化学品・燃料原料に転換する事業)からスピンアウトした企業として知られ、油ガス産業の既存インフラを転用することで、低炭素かつ低コストな水素供給の実現を目指す。
- 同社のアプローチは、水電解のように地上で水を分解して水素を作るのではなく、地下の炭化水素(残留油など)を微生物の代謝で分解し、その過程で生成される水素を地上に回収する点に特徴がある

特徴/提供価値
「水素を作る」こと自体よりも、油ガス産業に存在する膨大な休眠資産(枯渇油井)を、低炭素エネルギー供給源へ転換する“資産転換モデル”にある。
特徴1:既存油井を活用し、設備投資と立ち上げ時間を短縮
従来の水素プロジェクトでは、新規の発電設備・電解装置・水素供給インフラなど、大規模CAPEXが必要になるケースが多い。
一方でEclipseは、既存の井戸や地上設備を転用することで、新規投資を抑えながら展開できる可能性がある。
特徴2:地下バイオ刺激による水素生成(“Gold Hydrogen”文脈)
同社はCemvita時代から「Gold Hydrogen(Gold H2)」の概念を掲げ、地下の微生物活動を制御して水素を得るアプローチを推進してきた。
2025年にはフィールドトライアル実施が公表されており、研究段階から実証段階へ進みつつあることが示唆される。
特徴3:“CO₂が出る=非クリーン”ではなく、CIとMRVで勝負する設計思想
地下で炭化水素を分解する以上、CO₂が副生する可能性は避けづらい。
そのため同社の価値は「完全ゼロ排出」ではなく、ライフサイクル炭素強度(CI)をどこまで下げられるか、またそれをMRV(測定・報告・検証)可能な形で示せるかを追求している
ビジネスモデル
従来の水素サプライチェーンとは異なり、「枯渇油井を水素生産拠点に転換し、分散型で水素を供給する」点が特徴となる。
主な収益機会は以下の3つに整理できる。
- 水素そのものの販売(kg単価)
- 水素を用いた発電用途向けの供給契約(長期オフテイク)
- 水素をアンモニアに変換し、国際輸送・輸出市場へ接続
特に、データセンター電源用途など「電力の確実性」が高く評価される市場では、単なる燃料販売以上の価値(供給安定性、オンサイト性)で収益性を高めようとしている
市場動向・なぜこの会社なのか?
水素市場は「脱炭素の切り札」として期待される一方で、現実にはコスト・インフラ・電力制約がボトルネックとなっている。
市場課題1:グリーン水素は電力・設備制約でスケールしづらい
再エネ電解は理想的な低炭素水素である一方、大量の再エネ電力と水資源、そして電解設備投資を必要とする。
さらに、電力供給の変動性が稼働率やコストに影響する。
市場課題2:ブルー水素はメタン漏洩・CO₂回収率が論点
天然ガス改質+CCSのブルー水素は短期的にスケールしやすいが、上流メタン漏洩やCO₂回収率の前提によって低炭素性が揺らぐという課題がある。
こうした状況下でEclipse Energyが注目される理由は、既存油ガス資産を転用することで「水素供給の立ち上げを速く、安く」進められる可能性がある点にある。
さらに、廃井を単にキャッピング(封止)するのではなく、水素生産施設へ転換することで「負債資産を収益資産に変える」モデルを提示している。
顧客・競合・パートナー
- 顧客:
- データセンター事業者(オンサイト電源)
- 発電事業者(タービン混焼・専焼)
- 水素需要家(産業用途)
- アンモニア輸送を含む国際サプライチェーン
- 競合:
- Proton H2、Kolomaなど
- パートナー
- Weatherford International:油田サービス企業である同社との資本業務提携により、既存井戸を活用した商業展開を加速する狙い
- Armada:データセンター電源用途の商業化を目指す提携