注目ベンチャー紹介:DMC Biotechnologies
2025
.
06
.
16

Written by Ryo Takei
今回の注目ベンチャーの紹介はDMC Biotechnologiesです。
DMC Biotechnologiesは、微生物の発酵プロセスを制御し、バイオ化学品生産の効率化を目指すバイオテクノロジー企業です。独自の「Dynamic Metabolic Control™」技術を開発し、その基盤技術で発酵プロセスを標準化・安定化・効率化し、バイオ化学品の生産を改善しています。
DMC Biotechnologies
サービス/プロダクト概要
- DMC Biotechnologiesは、独自の精密発酵生産技術「Dynamic Metabolic Control™」により微生物の増殖と物質生産のプロセスを最適化、発酵プロセスの標準化・安定化・効率化を実現することで、既存の石油由来化学品を代替する発酵由来バイオ製品の開発しています。

特徴・提供価値
- 同社の「Dynamic Metabolic Control™」技術は、微生物の代謝経路を動的に制御することで、発酵プロセスの予測可能性、堅牢性、スケーラビリティを向上させる。これにより、従来のバイオ製造が直面していた標準化やスケールアップの課題を解決し、低コストでの生産を可能する。
- 具体的には微生物内で目的化合物の生産に不要な代謝経路を動的にオフにする(シャットダウンする)ことにより、以下を実現
- 不要な副生成物の形成を抑制
- 炭素やエネルギーのフラックス(流れ)を目的産物に集中
- 時間と条件によって代謝の「スイッチ」をオン・オフ可能
- 高収率・高純度でターゲット化合物をシングルステップ生産
- 上記の「スイッチ機構」が、従来の静的な遺伝子改変とは異なり、微生物の増殖と物質生産のプロセスを分離、より柔軟かつ制御された生産プロセスを可能にする。
- 主な製品には、健康食品や栄養補助食品向けの「ミオイノシトール(myo-inositol)」や、L-アラニンなどのアミノ酸、化粧品向けの活性成分、バイオベースのモノマーなどがある。これらの製品は、食品、化粧品、工業用化学品など多岐にわたる分野で利用されている。

ビジネスモデル
- 自社開発製品の製造・販売:独自の精密発酵技術を用いて、高付加価値な化学品・栄養素・素材原料を製造、エンドユーザーや材料メーカーに販売。
- 共同開発およびライセンスモデル:大手化学メーカーや素材企業と製品の共同開発契約や受託開発/ライセンス契約を結び収益化。
なぜ今この会社なのか
- 遺伝子技術を活用して微生物や動植物等の細胞から有用な目的物質を生産する「バイオモノづくり」は、従来の化石資源を原料とした化学的な製造プロセスと異なり、多段階の化学反応を必要としないことや、自然条件下で製造可能なことから、温室効果ガスの排出量削減や化石資源原料の使用量削減などに寄与、「サステナブル(=持続可能)なものづくり」として近年ますます期待が高まっている。
- 一方、バイオプロセスにより製造するバイオ由来化合物は、従来の化学的なプロセスによる製造物と比較して製造コストが高いという課題があり、より効率的な生産を可能にする技術開発が求められている。同社のスケールアップ適応性の高い代謝経路制御技術と培養による物質生産技術は、微生物の増殖と物質生産のプロセスを最適化し、目的産物の生産性向上・低コストでの製造を可能にする。
顧客・競合・パートナー
- 顧客:化学メーカー、消費財メーカー、バイオマス由来原料を活用する企業
- 競合:Geno(旧社名:Genomatica、花王がパーム油代替原料の開発で提携)、LanzaTech(三井物産が微生物発酵を用いたエタノール生成事業に出資)、Solugen(栗田工業が水処理薬品の開発で提携)
- パートナー:東洋紡とプラスチックの原料となる基幹化合物の開発・商業化を目指し提携、仏ダノン・ミシュランなどと共同で精密発酵を大規模に推進する最先端バイオテック・プラットフォームの構築で合意
こちらの記事に対するお問い合わせやMTGの依頼などはこちらのアドレスからお気軽にご連絡ください。
info@tgvp.vcTGVPは米国を中心としたスタートアップ企業とTOPPANグループの連携を推進しております。