注目ベンチャー紹介:cella

Written by Ryo Takei

今回の注目ベンチャーの紹介はcellaです。
cellaは、DAC(直接空気回収)をはじめとする炭素回収事業者と協力し、回収されたCO2を地中深くの玄武岩層に注入することで自然の鉱物化プロセスを加速させる永久地中炭素貯留技術の開発に取り組んでいます。同社は、地下資源評価、圧入技術、モニタリング・検証サービスを通じて、永続的で検証可能性が高く、低コストの貯留ソリューションを提供します。

※取り扱い注意!こちらの情報の展開は社内限りです※

cella

https://www.cellamineralstorage.com/

サービス/プロダクト概要

  • DAC(直接空気回収)企業や排出削減が困難なセクターの企業から回収されたCO2を受け入れ、それを地下の玄武岩層に注入し、鉱物化によって永続的に貯留します。同社のサービスは、地下の資源評価、独自の注入技術、モニタリングおよび検証サービスなど、エンドツーエンドのソリューションを顧客に提供します。

出所:cella Webサイト

特徴・提供価値

  • 同社の技術は、回収されたCO2を水とともに地下の玄武岩層に注入することで、自然の鉱物化プロセスを加速させ、CO2を永続的に貯留する。玄武岩は、マグネシウム、カルシウム、鉄などの金属酸化物を豊富に含んでおり、これらがCO2と反応して、方解石(炭酸カルシウム)やマグネサイト(炭酸マグネシウム)などの安定した炭酸塩鉱物を形成、数百万年にわたってCO2を永続的に閉じ込める。
  • 玄武岩は地球の表面の約70%を占めており、世界中に豊富に存在するため、大規模な二酸化炭素貯留の可能性を秘めている。また鉱物化されたCO2は固体であるため、漏洩のリスクが低く、長期的なモニタリングコストや責任を軽減する。
  • 同社は独自の注入技術として、超臨界CO2を利用し、さらにさまざまな地質学的パラメータと機械学習を組み合わせて注入プロセスを最適化する新しい鉱物化技術を開発している。これにより、水の消費量を最小限に抑え、貯留効率と容量を大幅に向上させることができ、かつこの技術の地理的な活用範囲の拡大を可能にしている。
  • 現在進めているケニアでのパイロットプロジェクトは、同国に豊富に存在する地熱エネルギー資源を活用している。この地熱エネルギーは、パートナー企業のDACプロセスと、cella自身の注入およびモニタリング活動の両方に電力を供給するため、炭素除去プロセス全体のカーボンフットプリントを最小限に抑え、ネットネガティブ排出という成果を生み出す。

cella / Octavia Carbon の鉱物化施設イメージ

ビジネスモデル

  • DAC企業や排出事業者などの炭素回収企業に対する貯留および検証サービスを販売し、貯留するCO2のトン数に応じた料金を課金する。DAC企業は、貯留サービスを利用することで、除去した炭素を炭素クレジットとして買い手にプレミアム価格で販売したり、排出事業者は税額控除を申請したりすることができる。
  • 同社は、適切な炭素貯留場所(主に玄武岩層)の特定と評価、炭素回収企業(特にDAC企業)とのパートナーシップの確立、CO2注入オペレーションの設計と実施、永続的な貯留を保証するためのモニタリングおよび検証を行う。

なぜ今この会社なのか

  • DACをはじめとする二酸化炭素除去(CDR)技術の開発と展開が急速に進んでおり、これらの技術によって回収されたCO2を永続的に貯留するためのソリューションが強く求められている。また政府のイニシアチブやFrontierのような民間セクターの取り組みも活発化しており、これにより、さらなる炭素クレジット市場の発展と検証可能で信頼性の高い炭素除去・貯留の重要性が増している。
  • 同社は回収したCO2を永続的かつ安全に貯留する独自の鉱物化技術を通じて、炭素除去の全体的なコスト削減を可能にするほか、モニタリングと検証に重点を置くことで、信頼性の高い炭素クレジット市場の発展に貢献する。

顧客・競合・パートナー

  • 顧客・パートナー:現在ケニアで進めている同社技術の実証プロジェクトにて、DACアプローチによる相互補完的な炭素除去ソリューションの確立を目指し、DAC企業Carbon Atlantis(独、現社名;Phlair)、Octavia Carbon(ケニア)と提携している。同プロジェクトでは2025年中に200トンのCO2貯留を計画している。
  • 競合:類似の鉱物化アプローチをとるCarbfix(アイスランド)、Arca(カナダ)、44.01(英・オマーン)など

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