注目ベンチャー紹介:Carbice

Written by Yuhei Yano

今回の注目ベンチャーの紹介はCarbiceです。

同社はカーボンナノチューブ(CNT)を基盤にした熱インターフェース材料(TIM: Thermal Interface Material)を開発しています。

※取り扱い注意!こちらの情報の展開は社内限りです※

Carbice

https://carbice.com/

サービス/プロダクト概要

  • 代表的な製品は以下の通り
    • Carbice Pad®:汎用TIM。液体グリースと固体シートの利点を併せ持つ
    • Ice Pad®:高耐久・長寿命TIM。データセンターやGPU用途に最適
    • Space Pad®:宇宙空間対応のTIM。TRL9レベルで実際に衛星に搭載
    • Carbice Lab®/Carbice SIM®:シミュレーションと試作評価を統合した設計支援サービス

特徴/提供価値

  • 技術的特徴は整列型カーボンナノチューブを金属基材(主にリサイクルアルミ)に共有結合させた構造。これにより以下特徴を実現する
    • 高い熱伝導率
      • 厚み方向:12 W/mK
      • 面方向:200〜1,300 W/mK(従来のTIMを大きく上回る)
    • 長寿命・高信頼性
      • グリースのように乾燥・ポンピングアウトがなく、PCMのようにクラックも発生しにくい。
      • 熱サイクルを繰り返しても性能が維持・向上する事例もあり、衛星やEV用途に適する。
    • 取り扱いやすさ
      • シートやカセット状で供給され、貼るだけで使用可能。
      • 再利用やリワークも容易。
    • コスト面での工夫
      • 高価なCNTを使用しつつも、安価かつリサイクル可能なアルミ基材を活用。
      • TCO(総保有コスト)で見れば、長期的に安価。
‍画像出所:同社Webページ

ビジネスモデル

  • 製品販売+設計支援サービスの組み合わせ
    • 製品販売
      • 衛星メーカー、データセンター事業者、自動車OEM/Tier1などに直接販売を計画
      • Dow社との共同開発により、シリコーン接着剤付き(SA-90)やワックス系(SW-90)など、量産市場向けバリエーションも拡充予定
    • 設計支援サービス(SIM/Lab)
      • シミュレーションとプロトタイピングを組み合わせ、顧客が自社製品にTIMを最適導入できる仕組みを提供
      • 製品単価よりも「全体の設計・開発効率を上げる」価値を売っている

市場動向・なぜこの会社なのか?

  • 電子機器の小型化・高性能化に伴い、発熱密度は急激に上昇している。特に以下の市場では、熱設計がボトルネックとなっています。
    • EV(パワーエレクトロニクス):長寿命・高信頼性が必須。
    • データセンター/HPC/AIチップ:冷却効率が運用コストに直結。
    • 衛星・宇宙用途:修理不能環境での長期信頼性が必須。
    従来のグリースやPCM(ワックスやポリマーを基材とし、フィラーを含んだシート状材料。加熱されると柔らかく(融解)、冷却されると固化。)では対応しきれない領域において、Carbiceは 「材料の革新」ではなく「システム信頼性を支えるプラットフォーム」 を訴求。

顧客・競合・パートナー

  • 顧客:
    • 航空宇宙企業(衛星メーカー)
    • 自動車OEM/サプライヤー(EVパワーモジュール)
    • データセンター/クラウド事業者
  • パートナー:
    • Dow社:接着剤・シリコン技術との融合による新製品開発
  • 競合:
    • 従来型TIMメーカー(信越化学など)
    • グラファイトシートや高性能グリースを扱う企業
    • ただしCarbiceは「長寿命・再現性・予測可能性」に差別化軸を置いている
※取り扱い注意!こちらの情報の展開は社内限りです※

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