注目ベンチャー紹介:Carbice
2025
.
09
.
01

Written by Yuhei Yano
今回の注目ベンチャーの紹介はCarbiceです。
同社はカーボンナノチューブ(CNT)を基盤にした熱インターフェース材料(TIM: Thermal Interface Material)を開発しています。
Carbice
サービス/プロダクト概要
- 代表的な製品は以下の通り
- Carbice Pad®:汎用TIM。液体グリースと固体シートの利点を併せ持つ
- Ice Pad®:高耐久・長寿命TIM。データセンターやGPU用途に最適
- Space Pad®:宇宙空間対応のTIM。TRL9レベルで実際に衛星に搭載
- Carbice Lab®/Carbice SIM®:シミュレーションと試作評価を統合した設計支援サービス
特徴/提供価値
- 技術的特徴は整列型カーボンナノチューブを金属基材(主にリサイクルアルミ)に共有結合させた構造。これにより以下特徴を実現する
- 高い熱伝導率
- 厚み方向:12 W/mK
- 面方向:200〜1,300 W/mK(従来のTIMを大きく上回る)
- 長寿命・高信頼性
- グリースのように乾燥・ポンピングアウトがなく、PCMのようにクラックも発生しにくい。
- 熱サイクルを繰り返しても性能が維持・向上する事例もあり、衛星やEV用途に適する。
- 取り扱いやすさ
- シートやカセット状で供給され、貼るだけで使用可能。
- 再利用やリワークも容易。
- コスト面での工夫
- 高価なCNTを使用しつつも、安価かつリサイクル可能なアルミ基材を活用。
- TCO(総保有コスト)で見れば、長期的に安価。
- 高い熱伝導率

ビジネスモデル
- 製品販売+設計支援サービスの組み合わせ
- 製品販売
- 衛星メーカー、データセンター事業者、自動車OEM/Tier1などに直接販売を計画
- Dow社との共同開発により、シリコーン接着剤付き(SA-90)やワックス系(SW-90)など、量産市場向けバリエーションも拡充予定
- 設計支援サービス(SIM/Lab)
- シミュレーションとプロトタイピングを組み合わせ、顧客が自社製品にTIMを最適導入できる仕組みを提供
- 製品単価よりも「全体の設計・開発効率を上げる」価値を売っている
- 製品販売
市場動向・なぜこの会社なのか?
- 電子機器の小型化・高性能化に伴い、発熱密度は急激に上昇している。特に以下の市場では、熱設計がボトルネックとなっています。
- EV(パワーエレクトロニクス):長寿命・高信頼性が必須。
- データセンター/HPC/AIチップ:冷却効率が運用コストに直結。
- 衛星・宇宙用途:修理不能環境での長期信頼性が必須。
顧客・競合・パートナー
- 顧客:
- 航空宇宙企業(衛星メーカー)
- 自動車OEM/サプライヤー(EVパワーモジュール)
- データセンター/クラウド事業者
- パートナー:
- Dow社:接着剤・シリコン技術との融合による新製品開発
- 競合:
- 従来型TIMメーカー(信越化学など)
- グラファイトシートや高性能グリースを扱う企業
- ただしCarbiceは「長寿命・再現性・予測可能性」に差別化軸を置いている