注目ベンチャー紹介:BlueNalu

Written by Ryo Takei

今回の注目ベンチャーの紹介はBlueNaluです。
BlueNaluは、細胞培養による持続可能な魚介類の製造を目指す、米国のフードテック企業です。水産資源の需要増加や環境破壊といった課題に対し、魚をラボからつくる培養魚という新たな水産供給モデルを提案しています。

※取り扱い注意!こちらの情報の展開は社内限りです※

BlueNalu

https://www.bluenalu.com/

サービス/プロダクト概要

  • BlueNaluは、生きた魚を捕獲することなく、魚の細胞を用いて“切り身”の形状で培養魚肉を製造します。高級魚クロマグロの中でも需要が高い「トロ部位」に相当する培養マグロを開発し、レストラン市場向けに商品化を進めています。

出所:BlueNalu Webサイト

特徴・提供価値

  • BlueNaluが商品化を目指すクロマグロの脂身部分であるトロは、品質や味のばらつきが大きいという問題に加え、需要増加に伴う乱獲や違法な漁業による資源の急減に直面。同社は細胞から直接魚肉や製品を生産する細胞アクアカルチャーの技術により、重金属やマイクロプラスチック、寄生虫等のリスクを排除した安全で品質の均一化されたクロマグロのトロ部位を提供する。
  • 同社は、高品質で迅速な細胞成長を可能にする以下の技術を開発
    • スカフォールド、マイクロキャリア(いずれも細胞を付着・成長させるための足場となる構造体)、またはその他の接着技術に関連する制限なしに大規模生産を可能にする細胞懸濁プロセスによるコストの大幅な削減。
    • 特定の脂肪プロファイルを持つシーフード製品を可能にする特許出願中のリピッドローディング技術(脂質(リピッド)を細胞や粒子に効果的に取り込ませる/封入する技術)。
    • 細胞懸濁法を可能にする非遺伝子組み換え技術を使用したマスターおよびワーキング細胞バンク(特定の細胞を長期間にわたって安定的に保存・管理するためのストックシステム)の作成。
  • 同社は、クロマグロ以外への製品拡大も視野に、これまでに8種類の魚種(ブリ、シイラ、レッドスナッパーなど)で数百の細胞株を開発。
  • 2025年中の米国(FDA)およびシンガポールにおける販売許認可の取得・市場投入を目指すとともに、日本市場での販売に向けた準備も進行中。

出所:BlueNalu Webサイト

ビジネスモデル

  • 自社で培養技術と製造プロセスを確立し、戦略的パートナーと協業するB2Bモデルを採用。初期段階では高価格帯の外食産業(高級レストランや寿司店)向けに展開し、生産拡大に伴いコスト低減と市場拡大を図る。

なぜ今この会社なのか

  • 世界人口や所得の増大に伴い、魚を中心とする水産資源の消費量は、2050年には現在の約2倍に到達すると言われており、一方で、過剰漁業、気候変動、汚染、非効率な漁業操作など複数の要因により、世界の供給は急速に減少している。
  • 同社は細胞培養魚の技術を通じて、赤身魚やトロなど高付加価値魚種(米国では輸入依存が高く、アジアでは爆発的に需要増加)にも対応、世界中の水産需給の安定化と輸入代替につながる戦略的ソリューションを提供する。例えば過剰漁獲、底引き網による生息地破壊、混獲問題などの環境被害をもたらす従来漁業とは無縁であり、海洋生態系への負荷を抜本的に低減するほか、微小プラスチック、重金属(水銀)、病原体汚染のリスクがない安定供給も実現。需給ギャップに直面した魚市場に対して、安定・高品質・地産地消が可能な代替水産物を提供し、海洋環境保全と食品安全という消費者と社会の課題解決を目指す。

顧客・競合・パートナー

  • 顧客:寿司・高級レストラン、高級食材卸企業、フードサービス事業者
  • 競合:米スタートアップ Wildtype(2025年5月に同社の培養サーモンの販売が世界で初めて米国・FDAにより認可、販売開始)、英スタートアップ Hoxton Farms(代替肉の風味や食感を大きく進化させる培養脂肪に特化、住友商事と提携・三井化学が出資)
  • パートナー:Thai Union(タイ・世界最大のツナメーカー)、Nomad Foods(欧州冷凍食品大手)、Pulmuone(韓国・食品メーカー大手)、三菱商事・住友商事などと流通・販売面で提携。NEOM(サウジアラビアの未来都市・経済特区)なども出資。

※取り扱い注意!こちらの情報の展開は社内限りです※

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